
「片手仲介と両手仲介って、何がどう違うの?」
不動産を売るときには「仲介」という仕組みが関わってきます。中でも「片手仲介」と「両手仲介」は、不動産会社の立ち位置や考え方の違いによって、売主の条件や結果に影響が出ます。
この記事では、それぞれの仕組みや特徴、メリット・デメリット、そして売主にとって見えづらい「囲い込み」の問題まで、わかりやすく整理してお伝えします。
「大切な資産を、少しでも良い条件で売りたい」と考えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、不動産会社選びの参考にしてください。
不動産売却における片手仲介と両手仲介の基本的な違い
不動産会社がどう関わるかによって、売り方や結果は大きく変わります。
「片手仲介」と「両手仲介」は、その代表的な違いのひとつです。不動産会社がどちらを優先するかで、出会える買主の幅や成約価格、売主にとってのメリット・リスクも変わってきます。
ここでは、それぞれの仕組みや手数料の考え方、会社側の動き方の違いを整理しながら、「売る側にとって、どちらが納得しやすいのか」を解説していきます。
片手仲介と両手仲介の仕組み
売主と買主のそれぞれから手数料を受け取るのが両手仲介、どちらか一方からだけ受け取るのが片手仲介です。
以下に、それぞれの違いをまとめましたので、ご確認ください。
片手仲介
| 仲介の仕組み | 売主と買主が別の不動産会社が担当に依頼 |
| 手数料 | 取引1件につき1社分。売主もしくは買主のどちらか一方からだけ受け取る |
| 情報の流れ | 売主側の不動産会社がレインズに情報を登録し、買主側の不動産会社がレインズから情報を取得して紹介する |
両手仲介
| 仲介の仕組み | 売主・買主の両方を同じ不動産会社が担当 |
| 手数料 | 売主・買主の両方から受け取る |
| 情報の流れ | 同じ会社内で直接やり取り |
| 利益の立場 | 売主・買主の利益がぶつかる可能性あり |
片手仲介では、売主と買主の間にそれぞれ別の不動産会社が入り、立場を分けてやり取りをします。その分、売主側の会社は「売主の利益をきちんと守る」ことに集中しやすくなります。
一方で、両手仲介は1社が売主・買主の両方を担当します。会社にとっての利益は大きくなりますが、どちらかに偏った対応になってしまうのです。社にとっての利益は大きくなりますが、どちらかに偏った対応になってしまうのです。
売主の利益を最大化しやすいのは「片手仲介」

片手仲介では、売主側の会社が物件情報をオープンにし、他の不動産会社と協力して買主を探していきます。情報が広く伝わる分、多くの人の目にとまりやすくなり、条件の合う買主と出会える可能性が高くなります。
一方、両手仲介では、自社で買主を見つけようとするあまり、他社には情報を出さないケースもあります。ときには売主にとって不利な結果になってしまうこともあります。
片手仲介であれば、そうしたリスクを避けながら、売主の立場に立ったやり方で進めることができます。
仲介手数料は誰が支払う?報酬の仕組みから見る違い
片手仲介と両手仲介の報酬は、以下のように異なります。
- 片手仲介は売主のみから最大で「物件価格の3%+6万円+税」
- 両手仲介は売主・買主からの仲介手数料「物件価格の6%+12万円+税
両手仲介では売主と買主の両方からもらうので報酬が2倍になります。この「儲けが2倍になる」ことが、不動産会社が両手仲介をやりたがる一番の理由です。
そのために他社のお客さんを断ったり、業者に安く売ったりする問題が起きてしまいます。
両手仲介を狙う会社と片手仲介を行う会社の活動の違い
両手仲介を前提とする会社は、ほかの不動産会社に情報を出しにくくする傾向があります。
たとえば、次のように進みます。
- 売却の契約を結んでから最初の1週間は自社だけで買主を探す
- 決まらなければ、不動産会社専用の情報サイト「レインズ」へ登録
※このとき、物件の詳細をあえて伏せたり、販売図面や写真を載せなかったりして、他社からの問い合わせを避けるケースも。
一方で、片手仲介を基本とする会社では、契約後すぐにレインズへ正確な情報を公開し、他の不動産会社にも協力を依頼します。自社だけで買主を探そうとせずに、地域の会社も含めて広く情報を届けることで、多くの買主に見てもらえるチャンスが生まれます。
このような売り出し初期の姿勢の違いが、「どれだけの人に届くか」「どんな買主と出会えるか」「いくらで売れるか」にも、大きく影響してきます。
【売主視点】片手仲介と両手仲介のメリット・デメリット
片手仲介と両手仲介では、不動産会社の関わり方や、買主の探し方に違いがあります。どちらを選ぶかによって「売れるまでのスピード、金額、納得して決められるかどうか」に影響が出てきます。
ここでは、売主の立場から見たときに、それぞれにどういう特徴があるのかを整理しました。
片手仲介のメリット・デメリット
片手仲介は、「売る人の担当」と「買う人の担当」が別々になる仕組みです。売る側の不動産会社は、他の会社にも物件の情報をしっかり共有して、いっしょに買い手を探します。
ただなかには「片手仲介だと手数料が少ないからあまり動いてくれないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。実際にあまりやりたがらない会社もあります。しかし、売る人との信頼を大事にしている会社なら、ちゃんと誠実に対応してくれるはずです。
以下に片手仲介のメリット・デメリットをまとめましたので、ご確認ください。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・より多くの買主に届く ・公平な取引がしやすい | ・会社によっては積極的でない場合がある ・担当者の姿勢によって差が出る |
上記のようなデメリットもありますので、「どんな仕組みか」だけではなく「どんな人にお願いするか」も大切です。
両手仲介のメリット・デメリット
両手仲介は、売る人と買う人の両方を、同じ不動産会社が担当する仕組みです。やり取りの窓口がひとつになるため、内見の日程や条件のすり合わせなどがスムーズに進みやすいです。
ただ、会社によっては「自社で買主を見つけたい」気持ちが強すぎて、他社からの良い話を断ってしまうケースもあります。これを「囲い込み」といいます。
以下に両手仲介のメリット・デメリットをまとめました。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・やり取りの窓口が一つでスムーズ ・担当者が両方の事情を理解している | ・物件を囲いこむことがある ・買主寄りになり、値下げを求められる場合がある |
「早く売りたい」「条件を相談しながら進めたい」という場合には、便利な面もあります。
両手仲介が引き起こす「囲い込み」とは?
「高く売りたい」「できるだけ早く売りたい」と考えていたのに、なかなか話が進まない。そんなとき、実は囲い込みと呼ばれる不動産会社の動きが影響しているかもしれません。
囲い込みは、売主の知らないところで買主を制限し、売却チャンスを減らしてしまう行為です。以下では、囲い込みの仕組みや売主への影響、そして自分の物件が囲い込みを受けていないかを確認する方法を解説します。
囲い込みとは?なぜ違法ではないのか?
囲い込みとは、本当は他の会社が買主を紹介できるのに「今は紹介できません」「契約予定です」と言って断ることです。自分の会社だけで買主を見つけて、手数料を多くもらおうとします。
たとえば、以下の方法で他の会社が買主を紹介しづらくします。
- レインズ(不動産会社同士の情報サイト)に物件の詳しい図面を載せない
- 情報の更新をわざと遅らせる
- 「まだ販売準備中です」と言って時間をかせぐ
このような囲い込みは、たしかに売主にとっては損になる行為ですが、法律ではっきり禁止されていないため罰せられるわけではありません。全ての会社がこうしたことをするわけではありませんが、知っておくだけで安心して選びやすくなります。
囲い込みで売主が受ける2つの損
囲い込みがあると、売主は大きく2つの損をすることになります。
- 売れるまでの時間がどんどん長くなってしまう
- 結局安く売るしかなくなる
囲い込みがあると「時間」も「お金」も無駄になりやすいのが問題です。損をしないためにも、囲い込みをしない誠実な会社を選びましょう。
囲い込みをされているか確認する方法
囲い込みが心配なときは、自分でいくつか確認することができます。
| やること | 確認部分 |
|---|---|
| 不動産会社に「レインズの登録証明書」を出してもらう | ・情報サイトに載っているか・最新の状態か? |
| 物件検索サイトで自分の物件を探してみる | ・媒介契約した会社以外でも出てくるか?※本来であれば複数の会社が広告を出している |
両手仲介自体は悪いことではない
両手仲介という仕組み自体には問題はありません。
本当に問題なのは、両手仲介にこだわるあまり、売主よりも自分の会社の利益を優先してしまうことです。
- 「囲い込み」で他社のお客様を断ってしまう
- 「業者卸し」で相場よりも安く業者に売ってしまう
- 「専任返し」で業者との約束を優先する
こうした行為は売主の利益を損ねる原因になります。
一方で、普段は片手仲介を基本にしていても、たまたま自分の会社で良い買主が見つかった場合、結果的に両手仲介になること自体は良いと思います。
大切なのは、最初から両手仲介だけを狙って選択肢を狭めてしまうのではなく、売主にとって一番良い方法を考えて動いてくれるかどうかです。
損をしないための不動産会社の選び方

不動産会社を選ぶとき、会社の規模や知名度だけで判断してしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することもあります。売主にとって本当に大切なのは、自分の立場に立って考えてくれるパートナーと出会えるかどうかです。
以下では、契約前にチェックすべきポイントや、「片手仲介」を基本スタンスとする会社の選び方について、具体的にご紹介します。
媒介契約を結ぶ前のチェック
不動産会社と契約する前に、査定の根拠・売却方法・仲介の姿勢を必ず確認しましょう。
- 査定:近所で売れた物件の価格や相場のデータを見せてもらう
- 売却の進め方:どんな売却方法で進めていくのか教えてもらう
- 仲介の姿勢:片手仲介と両手仲介の説明をきちんとしてくれるか
上記の3つを必ず確認して、しっかりと説明してくれる会社であれば安心して任せられる存在です。
「片手仲介」を基本スタンスとする会社を選ぶ
片手仲介こそが正しい方法とは言い切れません。しかし、両手仲介のほうが損をしてしまう可能性は高いです。
実際に片手仲介を嫌がる会社は、自分の儲けを優先する可能性があります。両手仲介では売主と買主の両方から手数料をもらえるため、会社にとって都合が良いからです。
そのため、片手仲介の不動産会社を見つけてみてください。不動産会社に直接質問すれば、どのような仲介方法か教えてくれるはずです。
